光森裕樹『鈴を産むひばり』を増刷しました!




光森裕樹さんの第1歌集『鈴を産むひばり』の第2刷が、このたび出来上がりました。今年の8月に刊行後、さまざまな媒体で書評等が掲載され、あっという間に初版の1000部が無くなってしまいました。もちろんまだ書店に並んでいる分は残っているわけですが、ここ1カ月くらいは、版元の在庫が無くなり、お客様や書店からの注文に追いつかない状態でした。しかし、いくら評判がいい、売れ行きがいい、とはいえ、本書は決して一般読者が多いとは言えない歌集。カバーも帯も無い、そして活版印刷でつくられたこの硬派な書籍をあえて増刷するべきか。社長もずいぶんと悩んだようです。



それでも増刷しましょう、という結論に至ったのは、この歌集の良さはきっと時間が経っても色あせないだろう、という思いからです。本は、刊行から時間がたつうちにだんだんと売上げの勢いが衰えていくもの。ただ、本当に力のある本は、当初の勢いが無くなっても、時間をかけてゆっくり売れていくものだと思うのです。たとえば2005年に刊行した『あたまの底のさびしい歌』。こちらは刊行からもう5年が経ちますが、いまだにぽつりぽつりと注文が続いている本です。『鈴を産むひばり』もきっとそんなふうに、時間をかけても確実に読者を増やしていく本だと、私たちは考えています。出版不況のいま、歌集の増刷は無茶な冒険にも思えるかもしれませんが、こういう時代だからこそ、本のもつ力を信じてみたいと思います。



そして、ちょうど第2刷ができあがるのと同じタイミングで、書評サイト「Book Japan」に本書の書評が掲載されました(書評はこちらから)。評者は、映画フリーペーパー「buku」の編集人でもある北篠一浩さん。記事でも書かれているように、歌集の書評は生まれて初めてのことだそうですが、本書の佇まいからその内容まで、丁寧に紹介してくださいました。北条さんはまた「できれば、生まれてから一度も歌集など買ったことがないという人にも試してほしい」と書かれています。実は私自身も、恥ずかしながら短歌のことはあまり詳しくありません。最初にこの本のゲラを渡されたときも、「なんだか難しそうだな」というのが第一印象でした。けれど、実際に読んでみるとその歌の世界にぐいぐい引き込まれ、「短歌ってこんなにおもしろかったのか!」と驚かされました。「短歌」という形式にとらわれず、いろんな人に読んでもらいたい一冊です。

もう1ヶ月以上、ずっと鞄に入れて持ち歩いている。みずいろ、と正しくひらがなで表記したい、その音の連なりの感覚を久しぶりに思い出すような気持ちで、「いいなあ」としょっちゅう触ってしまう。それほど果敢な装幀だと思うのだ。そして印刷に疎い自分でもハッキリわかる、活版印刷の確かさ。端正で眼にやさしい本文組みの美しさ。カバーなし、帯なしの潔さ。


(略)


 なんの変哲もない日々の、ごくありふれたモノやコト。電球は時々は替えねばならぬだろうし、手帳ならしょちゅう開いたり閉じたり、ましてリング付のそれなら、「パチン」という音を楽しむためにも何度も触るだろう。恋人ならためいきも甘く、溢れるばかりのベリーを乗せたタルトを出す店では、そう、蛍光灯の白い光をその中に沈ませ、表面がやわらかくカーブして見える珈琲をカップで出すだろう。
 そんなどこにでもある事象が、歌の力によって、世界の無関心の海の中からからスッと掬い出される。まるで上手に操作できた「UFOキャッチャー」みたいに。
(北篠一浩)

他にもここ2カ月くらいで、「朝日新聞」(10月24日)に掲載された歌人穂村弘さんの書評、「週刊新潮」で『鈴を産むひばり』収録の歌を紹介してくれた歌人俵万智さんの記事、「すばる」12月号に掲載された詩人の文月悠光さんの「読書日録」など、さまざまな媒体に書評・紹介記事が掲載されました。長くなりそうなので、これらの記事の紹介はまた明日にでも更新します。



鈴を産むひばり

鈴を産むひばり

amazonにも近々再入荷予定です。