光森裕樹さんの朗読イベント「かじんのじかん」




本日24日14時半から、鎌倉のGALLERY Happy Go Luckyで第2回港の人ポエトリー・リーディング「かじんのじかん」を開催しました。出演は、若手歌人の光森裕樹さん。短歌の朗読では、先日第55回現代歌人協会賞を受賞した『鈴を産むひばり』に収録されたものから、最近発表されたばかりのものまで、たくさんの作品を朗読していただきました。また短歌の朗読の合間には、それぞれの作品ができるまでの経緯をお話ししたり、かつて書いたという文章などを朗読しました。短歌のなかでいちばんの新作は、「歌壇」5月号に掲載されたばかりの「一ダースほどの青い目薬」12首。これらは、今回のイベントが決まってから作った作品ということで、朗読することを意識しながらつくったものだそうです。「歌壇」5月号は現在発売中ですので、ご興味のある方はぜひこちらで読んでみてください。


朗読前には、この日のために光森さんが用意したレジュメと一通の黄色い封筒が配られました。レジュメにはその日読む短歌が記されていましたが、気になる黄色い封筒をあけると、そこには本日の朗読メニューが書かれた1枚のポストカードと6枚の小さな写真が。旅をするのが好きだという光森さん。それぞれの写真は、ブータンアイスランド、ツバルなど様々な国を旅したときに撮影したものでした。今回朗読した短歌にも、こうした旅のできごとが歌われており、写真に映された旅先の景色を眺めながら朗読を聞く、という演出でした。光森さんの旅の写真は、HPでも見ることができます。こちらもぜひご覧ください。


イベント中、短歌の朗読以外にいちばん時間をかけていたのが、かつて1ヶ月近く旅をしたというタイでの話でした。旅の間につけていたという日記を読んでいただいたのですが、夜行列車のなかで出会ったタイ人のおばさんとのやりとりには、淡々とした光森さんの口調も相まって、思わず笑ってしまいました。実際にこの旅によってつくられたのは3首だけだったようですが、このタイ旅行は光森さんが短歌を本格的に詠むようになったルーツともいえる旅なのだそうです。この日記には、旅の間に移動したチェンマイ、アユタヤ、ピピ島といった地名が登場していましたが、実は私も大学時代にタイを旅したことがあったため、当時のことを懐かしく思い出しながら聞いていました。


光森さんがこうした朗読をするのは今回が2回目ということでしたが、とても2回目とは思えないくらい堂々とした雰囲気でした。落ち着いた声で淡々と読みあげていましたが、決して単調ではなく、静かな時間のなかでその作品世界をじっくりと味わうことができました。また、朗読後には質疑応答が行われ、観客の方々からもたくさんの質問・感想が寄せられていました。会場の雰囲気も手伝い、親密な空気が流れるイベントだったような気がします。光森さんの演出によるすてきな「かじんのじかん」となりました。90分に及ぶ朗読をしてくださった光森さん、そして遠い鎌倉までご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。短歌の朗読は初めて、という方も多くいらっしゃったようで、そうした方々にも楽しんでいただけならとてもうれしいです。


港の人ポエトリー・リーディング「詩の時間をどうぞ」は今後も続けていく予定です。まだ次回の予定は決まっていませんが、できれば今年の秋か冬頃に3回目ができればいいな、と考えています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。