リブロ渋谷店での「文芸グルーヴ」フェア





前回の日記に引き続き、書店でのフェアのご紹介です。先日リブロ渋谷店に寄ったところ、ちょうど文芸誌5誌(「群像」「新潮」「すばる」「文學界」「文藝」)の編集部による選書フェア「文芸グルーヴ」が始まっていました。レジ前のスペースに、POP付きでずらりと並んでいます。


それぞれの編集部が20冊ずつ選んだということですが、選書の基準はさまざまです。まず「群像」は、【「群像」編集者が選ぶ人生を変えた本】ということで、編集部員が子供の頃、学生時代、入社してから、大きな影響を受けた本をセレクトしたそうです。「新潮」は、編集部が考える〈文芸〉20冊。小説とも文学ともニュアンスの異なる〈文芸〉という言葉をテーマに、編集部員5名が選んだ本が並んでいます。「すばる」は、「すばる」から生まれた本(最近のもの)を中心にした20冊。「文學界」は、平成以降の新人賞受賞作のなかから15作品、加えて、5人の編集部員が1人1作品ずつ「お勧めの書」を選んでいます。「文藝」は、編集部員4名が選んだ本のなかから絞り込まれた20冊。この企画自体は「オールタイムベスト」を選ぶ方針だそうですが、「文藝」は「今年のベスト」としてすべて今年刊行された本を選んでいます。


残念ながら港の人の書籍は入っていませんでしたが、日々〈文芸〉の最前線にいる文芸誌の編集者の方々がどのような本を選んだのか、興味深く眺めることができました。「新潮」のコメントにあるように、〈文芸〉という言葉には、多義的な意味合いが含まれています。何を〈文芸〉としてとらえるのか、という点で、各誌の個性の違いが現れたフェアとなっています。特に「群像」「新潮」の選書では、小説や文学といったイメージにとどまらず、芸術書や思想書など、多彩なジャンルの書籍が集められているようでした。


また、本には編集部による選書のコメントもPOPで付けられ、これらを読んでいるだけでも十分楽しめるようになっています。また棚には、コメントが載った特製のリーフレットも置かれています。個人的におもしろいと思ったのは、「群像」と「文藝」のコメント。2誌とも、各編集部員がそれぞれ選んでいるためか、その本に対する個人的な思い出や感想が書かれていて、親しみやすく感じました。なかでも惹かれたのは、「群像」編集部によるヴィスワヴァ・シンボルスカ沼野充義訳)の『終わりと始まり』(未知谷)に対する言葉です。

私はどちらかというと詩が苦手でしたが、大学の授業で本書に収められた「詩の好きな人もいる」を読んで、詩に対して勝手に作っていた壁がはらはらと崩れました。
(シンボルスカ『終わりと始まり』/『群像』の選書コメントより)

このフェアを担当しているのは、リブロ渋谷店の文芸担当Yさん。いつも港の人の本を好意的に扱ってくれるだけでなく、本のことをいろいろと教えてくれる、とても信頼できる書店員さんです。Yさんが担当する文芸棚では、フェアだけでなく、通常の棚の並べ方もさりげなく工夫されているので、仕事以外でも「今はどんな棚ができてるのかな?」とついつい覗きに行きたくなってしまいます。


選書フェア「文芸グルーヴ」は、リブロ渋谷店レジ前にて開催中です。ぜひ一度訪れてみてください。




リブロ渋谷店
〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコpart1 B1F
電話:03-3477-8736
営業時間:10:00〜21:00


終わりと始まり

終わりと始まり