新刊『ブラジルから遠く離れて 1935-2000』

miasiro2009-04-28



新刊の紹介です。人類学者の今福龍太さんと、三浦半島の秋谷でブックサロンを主催するサウダージ・ブックスの共編著となる『ブラジルから遠く離れて 1935-2000 クロード・レヴィ=ストロースのかたわらで』が刊行されました。


本書は、20世紀最大の人類学者、C・レヴィ=ストロースの名著『悲しき熱帯』や、彼の写真作品を精緻に読み解きつつ、レヴィ=ストロースの思想にとって〈ブラジル〉という場がどのような意味をもっていたかを再考する書です。


まずは『悲しき熱帯』について簡単に説明します。レヴィ=ストロースは、1935年、27歳の頃にサンパウロ大学での教師の職を得、フランスからブラジルへと渡ります。ここでの2年間、彼はサンパウロに住み、南米インディオの諸部族の調査旅行を行います。そして、それからおよそ20年経った55年に、ブラジルでの経験をつづった『悲しき熱帯』という一冊の本が刊行されるのです。94年には、フランスで『ブラジルへの郷愁』という写真集が、さらに96年にブラジルで『サンパウロへのサウダージ』という、35〜37年当時のサンパウロの街を映した写真集が刊行されます。一方、今福龍太さんは、2000年に同じくサンパウロ大学での仕事のために、半年間ブラジルに滞在することになります。そこで『サンパウロへのサウダージ』に興味を惹かれた今福さんは、1935年にレヴィ=ストロースが映した写真と同じ構図で、2000年のサンパウロの街並を映し出すという、写真集の再撮影プロジェクトに取り組みます。


こうした今福さんの取り組みは、07年、萱場町のギャラリー・マキにて、ふたり(レヴィ=ストロースと今福)の写真構成による映像インスタレーション「ブラジルから遠く離れて 1935/2000」展として開催されます。そして、08年には『サンパウロへのサウダージ』の日本語版に、今福さんによる写真や長編エッセイが収められた形で、みすず書房から刊行されます。


今回、港の人から刊行された『ブラジルから遠く離れて 1935-2000』には、「ブラジルから遠く離れて 1935/2000」展で行われたトークの再録や、同展のパンフレットに収められた論考の他、本書の編集、制作を行ったサウダージ・ブックスの淺野卓夫さんによるエッセイや、サウダージ・ブックス編「『悲しき熱帯』を讃えて 引用の小冊子」などが収録されています。


『悲しき熱帯』を読むための手引き書として、ぜひ手にとっていただければと思います。



『ブラジルから遠く離れて 1935-2000 クロード・レヴィ=ストロースのかたわらで』
http://www.minatonohito.jp/products/084_01.html


サウダージ・ブックス
http://sea.ap.teacup.com/saudadebooks/