第1回港の人ポエトリー・リーディング「詩の時間をどうぞ」を終えて


*永澤康太さんの朗読



*古本ユニット「ricca」による詩集古本市


7月11日(日)、長谷にあるカフェ〈一花屋〉さんで、第1回港の人ポエトリー・リーディング「詩の時間をどうぞ」を開催しました。出演者は、若手詩人ユニット「氵(サンズイ)」の橘上さん、永澤康太さん、吉原洋一さん。古い日本家屋を改築した〈一花屋〉さんは、縁側から庭を眺められるという素敵な空間。客席にはちゃぶ台と座布団が用意され、外からは鳥や虫の声が聞こえていました。


「氵(サンズイ)」によるポエトリー・リーディングは、まずは永澤康太さん、吉原洋一さん、橘上さんがそれぞれ自作の詩を朗読。一旦休憩を挟み、3人によるコラボ作品を即興で朗読した後、アフタートークで終了となりました。またアフタートークの前には、港の人の代表・里舘による北村太郎さんの詩の朗読も。そして終わった後は、近くの由比ガ浜海岸の海の家で打ち上げ。この日は風が強く、荒れる海の音を聞きながらの打ち上げとなりました。


サンズイの3人の朗読は、スタイルも詩の内容もまったく異なり、それぞれの個性が際立っていました。一番目に朗読した永澤康太さんは、朗読用の詩は紙に書き留めることはせず、自分の体のなかにためていった言葉をダイレクトに朗読の場で発表する、というスタイル。原稿などは持たず、手をゆっくりと動かしながら自分の言葉をかみしめるように語る姿が印象的でした。吉原洋一さんは、もともと写真家で「氵(サンズイ)」の活動とともに詩を書き始めたそうですが、そのためか、詩というスタイルにこだわっていない印象を受けました。普段の会話のように、何気ない口調で観客に向かって語りかけていく様は、どこか現代演劇のようでもありました。最後に朗読した橘上さんは、初めは手元の原稿の束を括りながら朗読していたものの、途中から急に関西弁のようなアクセントで「雨」に向かって怒りだす(これだけ書くと意味が伝わらないかもしれませんが…)という不思議なパフォーマンス。橘さんのあまりの豹変ぶりに、あっけにとられながらも、だんだんと笑いがこみ上げてきました。


このようにそれぞれまったく異なるスタイルの3人。コラボ作品による即興ライブも、「イズミ」という名前をもとにまったく異なる話が展開していくという、不思議なものでした。アフタートークによると、「イズミ」という言葉だけを決めて、他は何も決めずに即興で3人の詩をつないでいった、とのこと。その場でしかできなかった作品であり、二度と同じものをつくることはできない作品だそうです。


今回のイベントは、会場が古民家ということもあり、家のなかで友人たちの話を聞いているようなリラックスした雰囲気で始まりました。しかし、「氵(サンズイ)」のみなさんの朗読ライブが始まると、一気に緊張感が高まり、観客のみなさんの間にも静かな熱気がただよっていたような気がします。休憩の合間には、会場で開催した古本ユニット「ricca」さんによる詩集古本市を眺めるお客さんが多く、私も終了後に何冊かおもしろそうなものを買って帰りました。


港の人でこのようなイベントを行うのは初めてのことでしたが、これからも「港の人ポエトリー・リーディング」を続けていきたいと思います。今回来ていただいた方も、来れなかった方も、今後ともよろしくお願いいたします。


【出演者】

「氵(サンズイ)」

◎橘上(たちばな・じょう)

1984年生まれ。1999年より詩を書き始め、2007年第一詩集『複雑骨折』発表。バンド「うるせぇよ」のヴォーカルでもある。

◎永澤康太(ながさわ・こうた)

1983年生まれ。2005年現代詩手帖賞を受賞。08年第一詩集『losedog』発表。今年2月、詩人の倉田比和子氏と『声とことば』1号を発刊。

◎吉原洋一(よしわら・よういち)

1983年生まれ。「氵」活動開始にあたって作品を書き始める。ふだんは写真家として、「あさしぶ」というポートレートを撮り続けている。