港の人の「本の帯」についての思い(「朝日新聞」読書欄「扉」)



本日(2月19日)の「朝日新聞」朝刊・読書欄「扉」にて、弊社の代表・里舘による「本の帯をやめました」宣言について紹介されました。同記事では、他に『帯のデザイン』(ピエ・ブックス)という本での戸田ツトムさんらによる発言も紹介されています。


この記事は、先日発行した弊社のPR誌「港のひと」8号で里舘が書いた「帯を捨てよ、書物の姿とは何か。」という文章をもとに取材されたものです。「朝日新聞」の記事では触れられていませんが、「本の帯」に対するこの思いは、昨年の3・11を契機に港の人のささやかな決意として発したものです。今ある本から帯を外そうということではなく、今後港の人で作る本には帯はつけません、という宣言です。(この文章はこちらで読むことができます)。


また、この考えについて最初に文字として発表したのは、リトルプレス「歩きながら考える」6号でのことです。ライターの小林英治さんによる「港の人訪問記」のなかで初めて「本の帯を外す」という考えについて語りました。


本来ならば「歩きながら考える」本誌を読んでいただきたいのですが、今朝の「朝日新聞」の記事に興味を持ってくれた人に向けて、「本の帯」についての発言を一部ご紹介します。ご興味のある方はぜひ「歩きながら考える」本誌も読んでみてください。


〈港の人〉の本たちは、凛とした佇まいが美しく、思わず手に取りたくなってしまうものが多い(『きのこ文学名作選』は逆に振り切った例外だろう)。装幀も里舘さんがこだわっていることの一つだ。



「いつしかこうなってきたんですが、余分なものをそぎ落とす方向で考えていった方がいいと思っています。要は本にとって何が一番大事かということですね。
それから今年、3・11の震災があって、僕もショックで今も言葉にならないんだけど、出版社として何かアクションを起こさないといけないと思いました。それで考えたのが、本から帯を外そうということでした。帯って何なのか?って前から考えることがあったんですけど、宣伝文をつけて読者の目を引くためのもので、本自体とは切り離されたものじゃないかなと思うんです。
本来は、本が一冊あるだけでいい。そこで何か訴えるものが光れば読者は手にとるし、めくってみて、その字の配列や気配で感じてくれるわけじゃないですか。それを、帯で安易に妥協しない方がいいだろうと、デザイナーにも「本全体で表現してください」と言ったんです。そこは一発一発、本自体で勝負してやろうじゃないかと。資源の無駄使いの削減という意味では、うちなんかの部数でそんなに影響はないですけど、帯をつけたら安心という考えをまず変えていかないと、何も変わっていかないんじゃないかという思いですよね」




「港の人に、会いに行く。」『歩きながら考える。』6号より(文・小林英治)