新刊2冊のご案内



8月の新刊2冊を刊行しました。『近江兄弟社学園をつくった女性 一柳満喜子』と『高橋虔と近江兄弟社学園』(共に木村晟著)。装幀は〈港の人装幀室〉です。


港の人では、2008年に『ヴォーリズ評伝 日本で隣人愛を実践したアメリカ人』(奥村直彦著)という本を刊行しています。本書は、「メンソレータム」の生みの親であり、山の上ホテル豊郷小学校の建築家としても知られるウィリアム・メレル・ヴォーリズの生涯を描いたもの。ヴォーリズは、1905年に英語教師として来日、その後近江基督教伝道団(近江ミッション)を結成、生涯をかけて伝道、医療、製薬、教育、福祉事業に取り組みました。


今回刊行した2冊の新刊は、どちらもヴォーリズが創立した滋賀県近江八幡市にある近江兄弟社学園をめぐる本です。近江兄弟社学園は、今年で創立90周年を迎えます。


まず『近江兄弟社学園をつくった女性 一柳満喜子』は、ヴォーリズと結婚し、共に近江兄弟社学園を創立した一柳満喜子(ひとつやなぎ・まきこ)の教育について紹介した一冊です。旧華族の娘として生まれ育った満喜子が、自立したひとりの女性として明治、戦後をいかに生き、日本のキリスト教教育の基礎をつくっていったのか。その教育方針と実践について、詳しく紹介します。


高橋虔と近江兄弟社学園』は、17歳のときにヴォーリズと出会い、近江兄弟社女学校長、近江兄弟社学園教諭などをつとめ近江兄弟社学園の基礎をつくった、高橋虔(たかはし・まさし)の業績を紹介した本。高橋虔は、卓越した語学力の持ち主であり、『口語新約聖書』(54年)の改訳委員、『新約聖書 共同訳』(78年)の編集委員長をつとめるなど、日本を代表する聖書学者です。


著者の木村晟さんは、専門の日本語学の分野で活躍し、港の人でも多数の編著書を刊行しています。戦後の近江兄弟社学園卒業生でもあり、一柳満喜子、高橋虔のもとで実際に教育を受けた経験をもとに、本書2冊を執筆されました。近江兄弟社学園の教育理念とその実践、そして明治〜戦後の教育史、女性史を知るうえで貴重な本たちです。ぜひ『ヴォーリズ評伝』とあわせて読んでほしいと思います。