『賢治童話を読む』

miasiro2008-12-18



『賢治童話を読む』(関口安義)ができあがりました。
http://www.minatonohito.jp/products/082_01.html


07年6月の『若松賤子 黎明期を駆け抜けた女性』(尾崎るみ)から始まった〈港の人児童文化研究叢書〉も、これで3冊目となります。港の人では、学術書としてさまざまなシリーズものを刊行していますが、叢書シリーズはこれが初の試みとなります。また、この3冊は装幀もシンプルで素敵な本なので、書棚にずらりと並んだ様子はとてもきれいです。


『賢治童話を読む』は、32編の賢治童話を、芥川龍之介との対比をしながら、またキリスト教の視点から読み解くという画期的な一冊です。総頁数634頁というものすごい分量ですが、ひとつひとつの童話が丁寧に解説されており、じっくりと賢治童話に取り組むことができます。


なかでも個人的におもしろかったのは、第8章「原罪との闘い」のなかの「フランドン農学校の豚」についての部分です。実は、これは子供の頃に読んだ際に、農学校で飼われている豚が、強制肥育によって太らされ殺されていくという描写が恐ろしく、どうしても再び読む気になれなかったお話でした。しかし、本書ではこの「強制肥育」の描写についても、「原罪」というキリスト教的な視点をもとに、詳しく読み解いています。長いこと避けていた「フランドン農学校の豚」ですが、あらたな解釈を参考に、もう一度読んでみようと思うようになりました。


本には人それぞれの読み方があると思いますが、本書をきっかけにもう一度賢治童話に取り組んでもらえたら、と思います。