荒川洋治さん


正月休みの間に書店をのぞいてみると、詩人の荒川洋治さんの最新エッセイ集『読むので思う』(幻戯書房)を見つけました。「あ、新刊が出ているのだな」と思って奥付を見てみると、発行日は11月11日。1ヵ月以上も気付かなかったことに少し驚きながら、本を買って帰り、家でゆっくりと読みました。


荒川洋治さんには、〈港の人〉が『光が射してくる』を刊行した際にラジオ番組や雑誌等で何度も取り上げていただき、とてもお世話になっています。本を刊行してすぐの頃、書評がまだひとつも出ておらず、読者の方の反応にドキドキしていたときのことです。荒川さんから「レギュラー出演しているラジオ番組で本を紹介します」という連絡をいただきほっとしたことを、今でもよく覚えています。その後も、「ここでも書評を書きました」とそのたびに連絡をくださり、本当にこの本を好きになってくれたのだなあ、ととても嬉しく感じていました。


『読むので思う』には、そのタイトルからイメージできるように、読書を中心としたエッセイがたくさん詰まっています。そのなかには、「週刊朝日」に掲載された『光が射してくる』の紹介記事も収められています。「ひまわりと太陽」と題されたこのエッセイは、雑誌の掲載時より大幅に加筆されたようで、あらためてその言葉のあたたかさに触れることができます。


また、「毎日新聞」に掲載された「出版社を読む」というエッセイでは、「大手には出せない先見性のある書物を刊行し感動を与える出版社」として、いくつもの出版社とともに〈港の人〉が挙げられています。弊社を取り上げてもらえた嬉しさはもちろんのこと、そこに並べられている、その他の出版社とその刊行物の名前に大いに刺激を受けました。


弊社の書籍ではありませんが、寒い夜の読書におすすめしたい一冊です。

北村太郎『光が射してくる 未刊行詩とエッセイ 1946-1992』(港の人・二〇〇七)は、未完の詩と、エッセイを収めた一冊。


(中略)


半世紀前の本の世界がわかり、それだけでも興味ぶかいが、読書の基本にふれる著者のことばが目にしみる。
「読書によって心が広くなるより、狭くなる人の方が多い」
自分の好きなものしか読まないなど、「一つの小説の型、考え方の型、生き方の型、美の型だけにしがみついて、それ以外のものを認めようとしない」人になる危険があるというのである。「その一つの型あるいはそれを中心とした一つの態度の範囲においては、知識の量はますますふえてゆきますが、その人の心は、いよいよかたくなになるばかりです」。
考え方の型、生き方の型までは思いついても、「美の型」ということばは出そうで出ない。ものごとをよく見渡せる人なのだとあらためて思う。
(『読むので思う』より)


読むので思う

読むので思う

光が射してくる 未刊行詩とエッセイ1946-1992

光が射してくる 未刊行詩とエッセイ1946-1992