「かまくら春秋」と『秋の光』


すでに発売中の「かまくら春秋」(かまくら春秋社)2月号に、加島祥造さんによるエッセイが掲載されています。これは、毎回様々な方が執筆を担当するリレーエッセイ「こころにひかる物語」という連載で、155回目にあたる今回は、加島祥造さんにバトンが渡されたようです。


「ともしびと光」と題されたこのエッセイでは、東京生まれの加島さんが少年時代に慣れ親しんだ「街の灯」と、現在伊那谷の家で見つけた「灯」など、「光」をめぐる話が綴られています。また、このエッセイの末尾には、〈港の人〉から刊行された加島祥造セレクション2『秋の光』のなかから、「秋の光」という詩の全文が引用されています。エッセイと併せて読むと、この詩のもつ情景がふっと目に浮かぶような気がします。ぜひ併せてご覧になってください。

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『秋の光』は、「秋」にまつわる詩を集めたアンソロジーで、エリザベス・ジェニングス、白楽天、李賀、蘇東坡、陶淵明、イエーツなどの翻訳詩9篇と、加島祥造による詩15篇が収められています。初期の貴重な作品や、伊那谷での秋の情景を思い起こさせるすてきな詩など、加島さん自作の詩を多く読むことができるのも、この本の大きな特徴です。また、普段読む機会が少ないと思われる漢詩も、訳のおかげか、その世界観にとても入りやすい内容となっています。それぞれの詩人によって描かれた秋の風景、秋を思う心、秋にまつわる思い出、そんな様々な「秋の詩」を楽しめる一冊です。



ちなみに、私がなぜだか一番気に入っているのは、「prologue」であるエリザベス・ジェニングスの「秋のはじめの歌」(Song at the Beginning of Autumun)の最後の一節です。一部だけを抜き出しても詩の全体の感じは伝わらないとは思いますが、最後の2行に感じる、なんとも言えないおもしろさだけでも伝われば、と思います。

でもあたしはいま
そんな枠をこえて子供のころに戻ってるわ。
あのころの秋は、焚火、おはじき、煙……
だからあたしはいま
窓ガラスに邪魔されながら
空気の中のあの微妙な変化を察している。
あたしが秋だと言ったら、それで
秋ははじまるのよ。


エリザベス・ジェニングス「秋のはじめの歌」『秋の光』より

秋の光 (加島祥造セレクション 2)

秋の光 (加島祥造セレクション 2)