『夏時間の庭』オリヴィエ・アサイヤス



先々週から公開中の『夏時間の庭』(オリヴィエ・アサイヤス監督)という映画が、まわりでとても評判がよく、さっそく銀座テアトルへ見にいってきました。この映画は、パリ郊外にある一軒家を舞台にした、ある家族の物語です。


名画家の叔父ポールの遺品とその記憶を大切に守ってきたエレーヌ(エディット・スコブ)は、自分の死後、それらをすべて処分するよう長男のフレデリック(シャルル・ベルリング)に頼みます。家族で代々受け継いでいくべきだと反対するフレデリックですが、母の死後、フランスから離れて生活をする次男や長女の意思を受け入れ、思い出のある家を売却することを決意します。家と貴重な美術コレクションの売却をめぐって、兄弟それぞれの生き方と家族のあり方が描かれます。


フランス・オルセー美術館20周年企画の一環で製作された作品ということもあり、映画のなかにはたくさんの美術品が登場します。かつて家族によって使われていた品々が、記憶のなかから掘り起こされ、やがて美術館の展示品として居場所を変えていく様は、とても感動的です。また、冒頭で子供たちが走りまわる庭は、夏の光にあふれた美しい姿を見せてくれます。


この作品の撮影を手掛けたエリック・ゴーティエは、本作の監督オリヴィエ・アサイヤスの『イルマ・ヴェップ』『感傷的な運命』や『ポーラX』(レオス・カラックス監督)、『イントゥ・ザ・ワイルド』(ショーン・ペン監督)といった作品を手掛けた、フランスを代表する撮影監督です。また、『そして僕は恋をする』『キングス&クイーン』など、日本でも人気の高いアルノー・デプレシャン監督の作品を、数多く手掛けています。


06年に『キングス&クイーン』という映画が公開されたとき、港の人では、映画のパンフレットも兼ねて一冊の本をつくりました。デプレシャン監督のインタヴューや、映画美学校で行われた講義録などを収めた『すべては映画のために! アルノー・デプレシャン発言集』という本です。『キングス&クイーン』という映画に夢中になりながらつくった本なので、とても思い出深い一冊です。


キングス&クイーン』もまた、家族のあり方を描いた作品です。エリック・ゴーティエによる映像も、『夏時間の庭』とはまた違う、繊細な美しさを湛えています。『夏時間の庭』に感動した方には、ぜひとも見てほしい作品です。



夏時間の庭
http://natsujikan.net/


『すべては映画のために!』
http://www.minatonohito.jp/products/057_01.html