新刊/加島祥造セレクション3『大鴉』



2007年から刊行が始まった「加島祥造セレクション」全3巻が、このたび完結しました。詩人の加島祥造さんによるこの訳詩集シリーズは、第1巻がアイルランドの詩人イエーツの訳詩集『最後のロマン主義者』、第2巻は自作の詩と秋を詠んだ訳詩を集めた『秋の光』、そして完結編となる第3巻は、エドガー・アラン・ポーの恋愛長詩「大鴉」をはじめとするポー訳詩集となります。


加島祥造セレクション3『大鴉』は、ひとりの語り手と一羽の大鴉、そしてレノーアという娘という三人の登場人物からなる物語詩です。ポーといえば、『モルグ街の殺人』など、探偵小説家として有名ですが、詩人としてもいまなお高い評価をうける作家です。36歳のときに発表された「大鴉」も大きな反響を呼び、なかでもアメリカのサロンなど、女性たちの間で熱狂的な人気を得たそうです。恋愛をテーマとしたロマンチックな物語が、多くの女性たちをとりこにしたのが、よくわかります。


実はこの「大鴉」は、95年に岩波文庫で出された『対訳 ポー詩集』のなかで、一度加島さんの手によって訳されています。しかし、加島さんの強い希望により、今回まったく新たな翻訳によってこの詩がよみがえったのです。本書には、「大鴉」の他に6篇のポーの訳詩と加島さんによるエッセイが収められています。このエッセイ「ロマンティシズムの再生」では、再びポーの詩に挑んだ加島さんの強い思いが語られています。


まだ「大鴉」を読んだことのない人も、すでに読んだことのある人も、加島さんの名訳によってよみがえったこの作品を、ぜひ一度手にとってみてください。



加島祥造セレクション3『大鴉』
http://www.minatonohito.jp/books/b088.html