今福龍太さんによるレヴィ=ストロース
情報として載せるには少し遅くなってしまいましたが、『ブラジルから遠く離れて』の著者・今福龍太さんによるレヴィ=ストロースについてのエッセイが、現在発売中の『現代思想』1月号と『すばる』2月号にそれぞれ掲載されています。
『現代思想』「レヴィ=ストロース」特集号では、「サウダージの回帰線 マッシモ・レヴィとナンビクワラ」というエッセイが掲載されています。ここでは、ブラジルのTVで放映された『サウダージの回帰線』というドキュメンタリー作品のことを紹介しながら、1930年代に訪れたブラジルの奥地ナンビクワラとレヴィ=ストロースとの関係について書かれています(『サウダージの回帰線』は、人類学者=映像作家であるマルセロ・フォルタレーザ・フローレスが制作した、レヴィ=ストロース97歳の年に行われたインタヴューの断片を軸に、ブラジル体験記である『悲しき熱帯』のテキストと、現在のナンビクワラの土地と人々の映像を重ね合わせたドキュメンタリー作品とのこと)。
一方『すばる』に掲載中の「レヴィ=ストロースの遺産 ジェネレーション遠望――種の時間と人間の歴史」という長編エッセイでは、『現代思想』の論文でも触れられていた、レヴィ=ストロースのジェネレーション(生成=世代)とディジェネレーション(退化)をめぐる思想的問題について、詳しく書かれています。
文明社会における時間というものは、誕生から死の瞬間まで、人間は年を重ねると共に進歩しやがて退化・衰亡していく、というような直線的な「歴史的時間」によって成立しています。しかし、レヴィ=ストロースが1930年代のブラジル探検で発見したものは、そうした西欧中心的な直線的な歴史時間とはまったく別の「種の時間」と言うべきものだったのではないか……。
どちらの文章もとてもおもしろかったのですが、とりわけ「ジェネレーションとディジェネレーション」についてのレヴィ=ストロースの思想をめぐるエッセイは、とても刺激的な内容でした。これまで当たり前のように抱いてきた、自分の時間や歴史の感覚について、改めて考えさせられました。
今福さんの文章は、レヴィ=ストロースの勤勉な読者でないからと言って、読む者を拒絶したりはしません。むしろ「あわい関心」(これも今福さんに教えられた言葉です)を抱く読者をこそひきつけるような、不思議な魅力をもっています。『ブラジルから遠く離れて』とともに、ぜひこのふたつのエッセイも読んでみてください。
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