新刊紹介/歌集『鈴を産むひばり』光森裕樹



ブログの更新がずいぶん遅れてしまいました。9月に入ったというのに、まだまだ暑い日がつづいています。


さてこのたび、新刊として歌集『鈴を産むひばり』(光森裕樹)を刊行しました。歌人・光森裕樹さんの第一歌集です。光森さんは1979年生まれ、2008年に第54回角川短歌賞を受賞した、今後が期待される新鋭歌人です。本歌集には、学生時代の連作「鈴を産むひばり」を筆頭に、第54回角川短歌賞受賞作「空の壁紙」などの連作が収められています。


本歌集は、1998年から2010年まで、歌人が12年間にわたって書きためた短歌のうち、314首を選んで一冊の歌集にまとめたものです。歌はその年代順に並べられており、歌集をめくるうちに、学生時代から社会人となった現在までの様子が浮かびあがります。ひとりの少年が社会の生活になじんでいく様子がおおらかに活写されている、青春歌集の傑作です。


本文は金属活字活版印刷、糸かがりによる造本です。昨年から始めた「活版印刷詩集プロジェクト」の第二弾となりますが、本歌集では基本フォーマットからいくつか変更を加えています。ページ数を増やし、並製から上製本へ。また、表紙も基本フォーマットではなく新たに関宙明(ミスター・ユニバース)さんに手がけていただきました。表紙には、鮮やかな水色の地に、糸のように細く繊細な白い線が引かれています。とてもさわやかで、美しい本となりました。


歌集の出版は、港の人にとっても初めてのこととなります。私自身、これまで短歌を読む機会はあまり多くありませんでした。けれども、初めてのその歌を読ませていただいたとき、世代が近いためか、ひとりの青年が現代を生きる様がはっきりと描き出されていて、どの歌もとても身近に感じられました。短歌に明るくない方にも、ぜひ手にとってほしい一冊です。


最後に、個人的に好きな歌をいくつか紹介します。なかでもお気に入りなのは「検索窓は雪明かりして」からの一首です。iPod nanoのイヤフォンコードを「わかさぎを釣る」動作になぞらえているのが、とてもおかしく、妙に納得してしまいました。


鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふでもこれでいいよねと云ふ(「鈴を産むひばり」)


イヤフォンのコードに手繰るiPod nano わかさぎを釣る要領で(「検索窓は雪明かりして」)


ああ苦しいとみんな云ふからいま死にたくないとみんな云ふから(「ああ苦しいとみんな云ふから(夢十夜 第六夜)」)

また、光森さんのHPでも本歌集が紹介されています。ぜひこちらもご覧ください。
http://www.goranno-sponsor.com/book/



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