関西の書店のこと1(神戸・海文堂)







朗読イベントなどもあり、すっかりブログの更新が遅くなりましたが、4月17日、18日、19日と、関西の書店をいくつかまわってきました。港の人では営業部があるわけではなく、普段は関東の書店をときどきまわっているくらいなので、なかなか地方の書店に行く機会がないのですが、ちょうど神戸の海文堂書店で合同フェア〈小出版社の冒険〉当ブログでの紹介はこちらが開催中ということもあり、挨拶もかねて神戸・大阪・京都の書店を訪ねてきました。


まずはフェア開催中の海文堂書店へ。神戸の元町駅(JR、阪神)を降りて、元町商店街をしばらく歩いたところにある老舗書店です。お店に入るとすぐ左手に、合同フェア〈小出版社の冒険〉の棚がありました。事前に海文堂のブログで写真は見ていましたが、こうしてずらりと揃った本を目にするとやはり嬉しいです。まずは今回のフェアを企画してくれた担当の北村さんにご挨拶し、フェアのこと、海文堂書店のこと、そしてこれからの書店と出版社のことなど、いろいろとお話しすることができました。


今回のフェアは、3月11日の地震後に急遽考えたもので、〈小出版社の冒険〉というタイトルは、雑誌「sumus」の12号の特集名からとったとのこと。今回の合同フェアに参加した、弊社や夏葉社、アルテス、クレインの4社は、「sumus」12号で取り上げられた〈小出版社〉ではありませんが、これからは〈小出版社〉や大型書店ではない書店にこそできることが増えてくるのではないか、という北村さんの思いがこめられているそうです。北村さんからフェアの提案をいただいたときは、ちょうど震災後のことで、これから出版業界はどうなっていくんだろうと不安になっているところでした。ですから、私たちのように小さな出版社こそ頑張っていかなければいけないんだ、と本当に勇気づけられました。合同フェアとして4社が揃ったのは今回が初めてのことですが、これを機にそれぞれの活動にも何かつながりができていけばいいな、と思います。海文堂書店さん、そしてフェアを企画していただいた北村さん、本当にありがとうございました。


個人的に今回のフェアで一番うれしかったのは、『あたまの底のさびしい歌』につけられた北村さん手書きのPOP(上の写真4枚目)。以前この日記でも紹介した、賢治のかつての教え子への手紙に書かれた言葉を、「3月11日以降、もっとも心にしみた言葉です」と紹介してくれています。話を聞くと、3月の震災直後に北村さんがたまたま古本屋で見つけてその内容に感動したということで、今回のフェアにも加えてくれたのだそうです。私自身、震災後にふとこの本を読み返していて、この最後の手紙のことばに勇気づけられたので、まったく偶然に同じことを思ってくれていた人がいたことを、とても嬉しく思いました。


このフェア以外にも、海文堂書店には興味深い本や棚がたくさんありました。お店そのものは街の老舗書店といった雰囲気ですが、ひとつひとつの棚に工夫が凝らされていて、かといって「個性派書店」というようなアクの強さは感じさせない、書店員さんたちの丁寧な仕事ぶりがうかがえる書店です。海文堂書店は、1914年に海事書の専門出版社として創業し、その後海事専門の小売書店を経て、現在の総合書店になったそうです。そのため、2階には海事書コーナーが設けられ、専門書や港町グッズが充実してします。お店の奥には、神戸の出版社みずのわ出版の棚や神戸本コーナーなども設けられていたり、また古本コーナーとして神戸の古本屋さんの本も並んでいたりなど、地元と密着した書店という雰囲気が感じられました。


驚いたのは、児童書コーナー。単に数が揃っているだけでなく、一冊一冊の絵本の見せ方、ジャンルの分け方がとても丁寧なのがよくわかりました。その他、文芸書・人文書コーナーももちろん素晴らしい品揃えでしたが、北村さんが担当されている芸術書(音楽・映画・古典芸能など)コーナーも、とても充実した棚がつくられていました。映画本の棚では、清流出版の映画本がほぼ全てというくらいにずらりと並んでいて、さらにその隣に、新刊書店ではめったにみかけない由良君美『セルロイド・ロマンティシズム』(文遊社)、そして四方田犬彦の本が続くという、渋いラインナップ。ご本人とお話ししていて、とにかく本が(なかでも文学が)お好きなのだな、と印象を受けましたが、北村さんが担当されている目配りが利いた棚を見ても、そのことがよくわかりました。


その他にも神戸ではジュンク堂三宮店、紀伊國屋書店神戸店、ジュンク堂西宮店などを訪ねてきましたが、長くなったので今回は海文堂書店のことだけ紹介しました。フェアは今月30日で終了となりますが、それ以外の棚も充実したものばかりですので、神戸に行った際はぜひ海文堂書店を訪ねてみてください。



海文堂書店
〒650−0022
兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078−331−6501
FAX:078−331−1664
E-mail:books@kaibundo.co.jp
http://www.kaibundo.co.jp/index.html
ブログ:http://d.hatena.ne.jp/kaibundo/