流水書房青山店のフェア「小沢書店の影を求めて」








6月5日の朝日新聞書評欄「本の舞台裏」に、流水書房青山店で開催中のフェア「小沢書店の影を求めて」の記事が掲載されました。1972年創業、2000年に倒産した小沢書店は、現在も編集者・文芸評論家として活躍する長谷川郁夫さんが社長をつとめた出版社。この小沢書店の本を取り上げたフェア、手がけたのは、この日記でも何度か紹介した文芸担当のAさん。今回はなんと、小沢書店の刊行順総目録を収めた手作りの冊子まで作ってしまったそうです。30年近くにわたる出版社の記録となると、そう簡単に作れるものではありません。とにかく「すごい」の一言です。見本冊子はお店で見ることができます(岡崎武志さんのブログ「okatakeの日記」でもこの冊子のことが取り上げられています)。


フェアのことをブログで紹介しようと思ったのですが、なかなかうまく言葉にできないまま時間がすぎてしまいそうなので、よけいな解説などせずに、棚の写真と冊子の最後に書かれた文章を載せることにしました。写真ではつかみきれないくらい、充実した内容になっています。ぜひお店で確かめてみてください。ちなみに私がこのフェアで購入したのは、関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』(岩波現代文庫)と篠田一士『三田の詩人たち』(講談社文芸文庫)の二冊。おそらく、棚を見ればなぜこの二冊を買ったのか一目でばれてしまうと思いますが…。


小沢書店からは、北村太郎さんの著書も何冊も刊行されています。『詩を読む喜び』(1978年)『新編北村太郎詩集』(1981年)『詩人の森』(1983年)『詩へ詩から』(1985年)『うたの言葉』(1986年)。これらの本はどれも復刊されていないため、今回のフェアには並べられていませんが、その代わりに、先日刊行したばかりの『珈琲とエクレアと詩人』を中心に、北村さんの本がまとめられています。自伝ともいえる一冊、『センチメンタルジャーニー ある詩人の生涯』(草思社)を新刊書店で目にするのはめずらしいこと。隣には、長谷川郁夫責任編集『田村隆一全集』(河出書房新社)も並んでいます。

小沢書店のことが気になっていました。
古本屋で見かけるたび手にとって、ページを開いてパラパラと眺めました。
少し潔癖すぎるような気もしましたがその装丁はいつもなにか目について、手にとってしまう、
そんな力を持っていました。読むたび行き届いた編集に静かに興奮を覚えました。


(中略)


昨秋、河出書房新社から長谷川郁夫責任編集で『田村隆一全集』の刊行が始まるということを知りました。
第一回配本の一巻を手にするとそれはまさに小沢書店の本といえるものでした。
やはり少し潔癖すぎるような装丁、そして行き届いた編集。
新刊書店で小沢書店のフェアができないものか、そう思い始めました。



そうして考えたあげく、これならできるかもしれないと思いついたのが、
「小沢書店の本のない、小沢書店をめぐる、小沢書店について」のフェア。
まずは刊行リストを作って全貌を掴まなければ、そして作られたのがこの小冊子です。
いままで知ることができなかった発行年月を追った小沢書店の年譜です。
創業の1972年から、倒産してしまった2000年までの28年間。
その間に刊行された書籍、それだけをとおした小沢書店のある一面の軌跡が見えてきます。
もちろんここからは見えてこないことのほうが多いはずです。
しかし読者である私たちにできることは本を読むことです。
刊行リストを作成した私自身、小沢書店のことを知るのはまだこれからです。



冊子「小沢書店の影を求めて」より(秋葉直哉/流水書房青山店)