新刊『漢語辞書論攷』(今野真二著)ができあがりました。




好評となっている「四月と十月文庫」もそろそろ新刊ができあがりそうですが、港の人がもう一方で得意とする日本語学の方でも、新刊が刊行されました。


先日できあがったばかりの新刊『漢語辞書論攷』は、今週末頃から書店にも並ぶ予定です。著者は、気鋭の日本語学者・今野真二さん。港の人では、以前『文献日本語学』という本を刊行し、とても好評となりました(現在は在庫僅少)。本書は『文献日本語学』に続く第2弾。明治期に出現した特異な辞書「漢語辞書」を分析し、当時の日本語のあり方から現在までの辞書の歴史を考察した一冊です。


著者がどのように「漢語辞書」をとらえようとしているのか、どのような辞書体資料が「漢語辞書」に影響を与えているのか、明治期の「漢語辞書」がどのように現在の「漢和辞書」へとつながっていったのか、「辞書」と「漢語」という両面からその全体像を浮き彫りにした、日本語学にとって貴重な文献となっています。


装幀を手がけたのは清水理江さん。『文献日本語学』と対になっていますが、今回は帯はつけていません。日本語学の専門書ではありますが、堅苦しい雰囲気のない、すてきな本に仕上がりました。

 本書は、明治期に陸続と出版された「漢語辞書」を分析素材として採り上げた。(中略)(ほぼ)明治期という限られた時期においてのみ盛行をみた「漢語辞書」は「湧水」のようにみえる。「湧水」には「伏流水」があり、湧き出す地点には「条件」があるのだとすれば、「漢語辞書」にも「伏流水」にあたる流れがあって、それが何らかの「条件」によって、明治期に姿を現わしたといえよう。辞書という面からいえば、『節用集』、『玉篇』という「伏流水」にどのような条件が加わって、「漢語辞書」が明治期に姿を現わし、そしてそれがどのように一般的な「漢和辞書」へと繋がっていくのかということがら、また「漢語辞書」が採り上げている漢語の面からいえば、江戸期に形成されつつあった「漢語の層」とどのように重なり合い、重なり合わないのか、ということがらなどがまず追究すべき課題といえよう。


『漢語辞書論攷』「はじめに」より


漢語辞書論攷

漢語辞書論攷