新刊『W.D.スノッドグラス詩集』



2月の刊行書籍の2冊目は、『W.D.スノッドグラス詩集』です。訳者はアメリカ文学者の新倉俊一さんと、『アメリカのライト・ヴァース』の著者でもある西原克政さんです。新倉さんは、西脇順三郎の全集や定本全詩集のテクストの校訂をされているほか、エズラ・パウンド、エミリ・ディキンソンなどのアメリカ詩人の研究、翻訳を多数手がけています。


本書は、昨年1月に亡くなったアメリカの詩人、W.D.スノッドグラス(W.D.Snodgrass)の詩集です。スノッドグラスは、1959年に刊行した第一詩集『心の針』で衝撃的なデビューを果たし、翌年にはピュリッツアー賞を受賞した、アメリカを代表する詩人です。本詩集は、彼が遺した詩のなかから訳者が主要な作品を選び出し、翻訳をおこなったものです。巻末には、訳者の新倉俊一さんによる心のこもった解説が収録されています。


スノッドグラスが注目を浴びた第一詩集『心の針』は、自身の離婚による幼い娘との別れの苦悩をつづった連作詩集です。自伝的要素を多く含むその詩のスタイルは、「告白詩」と呼ばれ、アメリカ詩界に大きなインパクトを与えました。『W.D.スノッドグラス詩集』に収められた「心の針」を読むと、娘と共に暮らしたいと願いながらも、その夢に挫折する父親の苦しみが、読む者の身にせまってきます。


本詩集は、これまで紹介される機会の少なかったスノッドグラスの詩世界を、初めて日本語に紹介する貴重な一書です。少部数本のため、一般の書店などでの取り扱いは多くありません。ご注文の際は、ぜひ港の人までご連絡ください。

  万物の中で わたしたちだけが
 死を運ぶちからがある。
  この世のほかの何物も
 それを拒むことはできない。そのわたしでさえも
  奪い取る世の中に向かって 幾日も
 ベッドから身を起こすことができなかった。
娘よ、わたしにはほかの妻と子供がいる。
 わたしたちは互いに 人生を選ばなくてはならないのだ。


(「心の針」『W.D.スノッドグラス詩集』)

W・D・スノッドグラス詩集

W・D・スノッドグラス詩集