アルノー・デプレシャン来日と『キングス&クイーン』のこと



*写真はどちらも『キングス&クイーン』から。



フランス映画祭2010で、フランスの映画監督アルノー・デプレシャンの新作『クリスマス・ストーリー』が上映されます(3月20日の17時50分から)。また、21日には飯田橋の東京日仏学院にて、前作『キングス&クイーン』の上映と、デプレシャン、俳優のマチュー・アマルリック、映画監督の黒沢清さんの3人によるトークイベントが開催されます。


http://www.unifrance.jp/festival/films/#film03
http://www.institut.jp/ja/evenements/9666



……と書いてみたのですが、お知らせにしては遅すぎたようで、どちらもすでにチケットは売り切れでした……。新作『クリスマス・ストーリー』は今秋の劇場公開を待つとして、『キングス&クイーン』は、もう一度スクリーンで見たかったので、とても残念です。


キングス&クイーン』は、35歳で10歳のひとり息子(エリアス)をもつ女性ノラと、彼女の2番目の夫(未入籍)でヴィオラ奏者のイスマエルを主人公とした物語です。ノラは、息子を身ごもってまもなく最初の夫に自殺され、その後出会ったイスマエルとの関係もうまくいかず、今は画廊を経営しながら裕福な年上の男性との再(再)婚を間近に控えています。一方のイスマエルは、借金でクビがまわらなくなった挙げ句、精神病院に入院中。ふたりはまったく別の人生を生きているかに見えますが、そんな時、ノラの父親の末期がんが発覚します。仕事で忙しい自分の代わりに息子の世話をしてくれていた父の死を前に、ノラは、これからの人生をどう生きるべきか考えます。やがてノラは、かつて息子と3人で暮らしたことのあるイスマエルに、エリアスを養子にしてもらうことを思いつくのですが……。


こうして、ノラとイスマエルの人生が再び交差しはじめます。「いつか私が死んだら息子に家族がいなくなってしまう。新しい夫は夫としては最適だけど息子の父親にはなれない。だから息子と仲が良かったあなたが養父になって」。そうイスマエルに頼むノラは、あまりに身勝手でわがままな女性に見えます。けれど、どんなに悲惨な目にあっても再び立ち上がり前を向いていくノラは、とても美しく、誇りに満ちていて、思わず見惚れてしまいます。仕事もうまくいかず、家族や友人とも理解しあえず、ときには不当な非難を浴びることもある。それでも、登場人物たちそれぞれが、自分にとってもっともふさわしい人生の選択をしようとする。『キングス&クイーン』は、「人生の讃歌」とも言える、すばらしい映画です。


キングス&クイーン』はDVDが発売中ですので、新作を見る前の予習としても、ぜひご覧になってみてください。『キングス&クイーン』の公開記念に制作した『すべては映画のために! アルノー・デプレシャン発言集』も発売中です。デプレシャンの発言録や、『キングス&ストーリー』のフォトストーリーなどが収録されています。こちらも合わせてご覧ください。




すべては映画のために

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