「現代詩手帖」2010年7月号


現在発売中の「現代詩手帖」7月号にて、渡辺玄英さんによる「詩書月評」ページに、『W・D・スノッドグラス詩集』(新倉俊一、西原克政訳)が紹介されています。離婚、愛娘との離別など、自身の体験を告白するかのような「告白詩」として捉えられがちなスノッドグラスの代表作「心の刺」を引用し、次のように解説してくださいました。

離別した娘、戦争の影、四季自然、運命といったものが重層的かつ緊密に描かれ、決定的な何かがひたひたと迫って来るような緊迫した長編詩になっている。告白が詩になるのではない。人生の痛みや孤独の言語化しがたいものを客観して再構築するから説得力がある。だからこそ、自分の人生を突き放す表現が随所に現れるのだ。(渡辺玄英)


現代詩手帖」7月号は、いつも以上に豪華な特集・小特集が組まれています。特集1「文月悠光――私から“わたし”へ」では、第15回中原中也文学賞を受賞された文月悠光さんと吉増剛造さんとの往復書簡、文月さんと佐々木敦さんの対談、その他読み応えのある論考を収録。また、特集2「ジェローム・ローゼンバーグの宇宙」では、先日来日されたアメリカの現代詩人ジェローム・ローゼンバーグさんの翻訳詩の他、伊藤比呂美さん、今福龍太さんらによるエッセイが収録されています。


特集2で取り上げられているジェローム・ローゼンバーグさんは、北米先住民の歌を英語に翻訳した、民俗学者でもある詩人です。3月に来日した際には、明治大学で詩、翻訳、旅をめぐるミニシンポジウムが開催され、私も聴衆として参加しました。司会は越川芳明さん、ゲストにジェロームさんの他、今福龍太さん、管啓次郎さんを招いて行われたこのシンポジウムでは、それぞれが自作の詩・翻訳詩等を朗読するという、とても活気のあるひとときでした。なかでも、ジェロームさんの朗読は、見たことのないような楽器やおもちゃなどを使用したり、まるで動物のような鳴き声を出したりと、「詩の朗読」ということばだけではイメージできない、不思議な魅力をもったパフォーマンスでした。


現代詩手帖」7月号では、このとき朗読された今福龍太さんの詩を日本語訳したものを読むことができます。また、山内功一郎さんが当日のイベントの様子を記したエッセイも掲載されていますので、こちらもぜひ読んでみてください。



現代詩手帖 2010年 07月号 [雑誌]

現代詩手帖 2010年 07月号 [雑誌]