「東京新聞」〈大波小波〉で『きのこ文学名作選』が紹介されました。


ここのところ、すっかりブログの更新が滞ってしまいました。気づけばもう2月も半ば。港の人では2011年に入ってからまだ新刊が出ていませんが、春以降に刊行予定の本をいろいろと準備しています。そろそろPR誌「港のひと」最新号の制作にも取りかかりたいのですが、どんな内容にするかがなかなか決まらず、時間だけが過ぎていってしまいます。昨年の3月末に発行した7号ももう在庫切れとなっていますし、春までには8号をお届けできれば、と思うのですが…。


昨年末からの『きのこ文学名作選』ブームはまだまだ続いています。本日は、19時から青山ブックセンター本店にて飯沢耕太郎さんと岸本佐知子さんのトークイベントを開催します。天気予報では、あいにく夜には雨になりそうですが、きのこを語るにはこんなじめじめした雰囲気がぴったりかもしれません。


さて、今日は『きのこ文学名作選』が取りあげられた「東京新聞」2月14日夕刊の〈大波小波〉の記事についてご紹介します。匿名によるこの名物コラムでは、電子書籍に対抗するかのような、「こだわりの美学」をもった本として、弊社の『きのこ文学名作選』と、横田順彌近代日本奇想小説史 明治篇』(プラールプレス)の2冊が取りあげられています。

電子書籍に対抗するかのように、このところ造本に工夫を凝らした本が目につく。飯沢耕太郎編『きのこ文学名作選』(港の人)もそのひとつ。表紙カバーにいくつも変形の穴を施し、それがまるで茸の林立のように見えるのだ。扉にもまた茸風の穴が…。中身も凝っている。萩原朔太郎からいしいしんじまで十六編の詩や小説が収録されているが、作品ごとに紙質、紙の色を変え、活字の大きさや書体、組みも変化に富む。
一冊の本が大小さまざまな茸に覆われた森のように見える。電子書籍ではこの楽しさは味わえまい。紙の微妙な手触りに「本」の命のようなものが漂う。
東京新聞」〈大波小波〉2月14日夕刊


このコラムで一緒に紹介された『近代日本奇想小説史 明治篇』は、近代日本におけるSF、冒険小説、幻想小説、その他の「奇想小説」の系譜を紹介した一冊。長年古書の蒐集を続けてきた著者の渾身のライフワークとのこと。残念ながら私はまだ実物を目にしていないのですが、記事によれば「頑丈な箱入り、本文は千二百ページを超える」大著で、「めったにお目にかかれぬ稀覯本・珍本の写真、図版も満載」ということで、造本にもかなり凝った書籍のようです。


東京新聞」夕刊に毎号掲載されている匿名批評コラム〈大波小波〉は、30年以上も続いている名物コラム。小出版社から刊行された書籍や、無名の著者の書籍を取りあげてくれることが多く、港の人では、以前『淳之介の背中』を紹介していただいたことがあります(2004年7月2日夕刊)。そういえば昨年末には、吉祥寺の小出版社クレインから刊行された『佐藤泰志作品集』のことが取りあげていました。今回の記事でも、『きのこ文学名作選』『近代日本奇想小説史 明治篇』共に、いわゆる「小出版社」から刊行された本ということで、「個性とこだわりの美学を押し通す姿勢に出版人の意地を感じる」として紹介していただきました。



きのこ文学名作選

きのこ文学名作選

近代日本奇想小説史 明治篇

近代日本奇想小説史 明治篇