『はじまれ 犀の角問わず語り』書評と〈サウダージ・ブックス〉フェアのお知らせ



母の友」5月号に、姜信子さんの『はじまれ 犀の角問わず語り』の書評が掲載されました。評者は写真家の野中元さん。とても感動的な文章です。ぜひ読んでみてください。


在日三世として自らを「故郷を持たぬ旅人」と語る著者は、そうした民族や政治の内紛で歴史に翻弄されてきた場所を旅して、人々の記憶と歌と物語に耳を澄ます。やがて記憶と向き合い、語り次ぐのではなく、「物言わぬ石のように封じられた記憶」「語り得ぬ記憶」を引き継いでいくことに辿り着く。


彼らの「空白」と自己の「空白」を重ね、向き合う中で生まれくる切実な言葉は、著者の言うところの「祈り」であり、決意ある言葉は僕の心にしっかりと痕跡を残していく。歴史の凄惨な証言とは裏腹に文章には静けさが漂い、挿入された各地の歌や詩人の言葉と響き合い、本の全てが失われた魂たちとの交歓を詠った一篇の詩のようだ。




野中元(「母の友」2012年5月号より)


さて、この本を一緒に作ったスモールプレスのサウダージ・ブックスは、この4月から香川県の豊島に拠点を移したそうです。瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、どのような活動を続けていくのか、今後が楽しみです。


そのサウダージ・ブックスの本と活動を紹介するフェアが、ジュンク堂書店池袋本店にて開催されます。その刊行物と、著者である、今福龍太さん(『ブラジルから遠く離れて』)、飯沢耕太郎さん(『石都奇譚集』)、姜信子さん(『はじまれ 犀の角問わず語り』)の選書各15冊を集めたフェアです。


この3人の著書は、港の人が発売元となって作った本です。心も、からだも、固くこわばって内にこもりがちな今だからこそ読むべき、〈旅〉の本をご紹介します。


フェアは、5月11日から6月10日まで、ジュンク堂書店池袋本店1階エントランスにて開催。6月9日(土)には、このフェアを記念したトークイベント(今福龍太×姜信子)も行います。みなさまふるってご参加ください。




「3・11以降の〈旅〉 サウダージ・ブックスの本+α」フェア
5月11日(金)〜6月10日(日)
会場 ジュンク堂書店池袋本店1階エントランス


トークイベント「「震え」の思想、「震え」の詩」
今福龍太×姜信子  
日時 2012年6月9日(土)19時30分 〜


★イベントに関するお問い合わせ、ご予約は下記へお願いいたします。
ジュンク堂書店池袋本店
東京都豊島区南池袋2-15-5 TEL 03-5956-6111
http://www.junkudo.co.jp/tenpo/evtalk.html#20120609_juikebukuro_ta
(後援:港の人)