《叢書 児童文化の歴史》全3巻、ついに完結!



このたび、《叢書 児童文化の歴史》(全3巻)の第3巻『児童文化と子ども文化』(加藤理、鵜野祐介、遠藤純編)を刊行しました。


本叢書は、「児童文化」の誕生期ともいえる大正期から現代まで、各時代の児童文化を特徴づける重要文献を集め、解題とともに収録した本。このたび第3巻を刊行したことで、「児童文化」の歴史と意義を検証するこの叢書シリーズがついに完結となりました。


 遊びをはじめとする子どもの文化は、人類の誕生と共に存在してきたといっても過言ではない。だが、「児童文化」は、誕生してからおよそ90年の時間が経過したに過ぎない。
 この叢書では、「児童文化」がどのような意味と概念を付与された言葉だったのか、その誕生時に溯って確認していく。そして、「児童文化」のその後の変遷を追いながら、子どもにとって「児童文化」とはどのような存在だったのか、各時代の「児童文化」を浮き彫りにしていく。さらに、「児童文化」の今日的な意味はどこにあるのか確認していく。
 この叢書を通して、これまで決して十分とは言えなかった「児童文化」についての整理と理解が進むことを念願している。そして、歴史上経験したことのない急激な社会と文化の変化の中で、ますます混迷の度を増す現代の子どもにとって、「児童文化」が光芒を放ちながら意味のある用語や活動となる契機としてこの叢書が活用されることを願っている。


【「刊行の趣旨」加藤 理(東京成徳大学教授)より】

第1巻『児童文化の原像と芸術教育』では、大正期から昭和12年までの重要な25文献を収録、誕生期・黎明期における「児童文化」の変遷をたどります。第2巻『児童文化と学校外教育の戦中戦後』では昭和初期から戦後までの重要文献(35文献)を収録、1945年(昭和20)を中間時点にする戦中戦後20年間の、激しく揺れ動いた児童文化のあり方を抽出します。


そしてこのたび刊行した第3巻『児童文化と子ども文化』が対象とする時代は、戦後の混乱期も終り、高度経済成長を遂げていく一九六〇年代から、現代まで。羽仁説子「生活文化と児童文化」、滑川道夫「教育と児童文化」、竹内長武「児童文化概念の成立過程」、藤本浩之輔「子ども文化論」、本田和子「境界にたって」、安藤美紀夫『児童文化』抄、古田足日「子どもと文化」抄など計22文献を収録しています。


その時代時代に書かれた「児童文化」についての各文献を読み解くことで、現代までの児童文化論の変遷を見直しながら「児童文化」とは何か、「子ども」とは何かを考える貴重な叢書です。ぜひ3巻合わせてご高覧ください。