小説『海の器』を刊行しました

『海の器』を刊行いたしました。鎌倉在住の女性作家、山口雪香さんによる小説です。山口さんは、歌人であり、女優であり、音楽や絵画もふくめさまざまな分野の芸術に通じていて、その教養の幅広さや美意識の高さが結晶化されたような作品だと言えるでしょう。装幀に使った絵も、山口さんの作品です。
物語の舞台は鎌倉。若く美しいふたりの女性(冴と朱鷺)と、美しい青年(樹)、この3人の心模様と成長を描いています。恋愛とか、憎悪とか、そんな単純な言葉では言い表せない繊細な精神性に、鎌倉の自然、人間の身体や仕草、ファッションや音楽、文学、アート、そんな世の中のあらゆる美が織りこまれ、複雑な色合いをもった作品になっています。さまざまな美を観察し、体験し、ふかく味わってきた人だけが書ける世界に違いありません。そしてこの小説は、作者の手によって20年にもわたって大事に書き育てられてきた作品なのです。

『海の器』を最初に書いたとき、冴や朱鷺、樹はわたしの友人でした。それから二十年が過ぎ、物語の中の彼らはわたしの子供のような年齢になっています。海風と空の青、樹々のそよぎ、渚のしぶきから、無垢な彼らは妖精のように私の中に現れてくれました。あなたの心が彼らのものがたりをいっしょに生きてくれたらうれしいです。(著者あとがきより)


物語には、時折、激しく赤裸々な性愛の描写も登場します。エロティシズムというものが人間にとっていかに大切なものなのか、若い3人が訴えかけてくるかのようです。



[書名]海の器
[著者]山口雪香
[造本]四六判/上製本/カバー装/本文358ページ
[定価]1600円(本体価格・税別)
ISBN978-4-89629-295-4 C0093 ¥1600E
http://www.minatonohito.jp/products/168_01.html