詩集『世界』が刊行されました

『世界 ポエマ・ナイヴネ』。港の人が初めて出す翻訳詩集となりました。ノーベル賞も受賞したポーランドの国民的詩人、チェスワフ・ミウォシュが1943年に出した詩集です。43年のポーランド。つまりナチスワルシャワに侵攻した過酷な状況下で、この詩集は地下出版されたのです。
サブタイトルの「ポエマ・ナイヴネ」は、ポーランド語で「純粋な詩篇」。収められた20篇の詩はゆるやかにつながっていて、詩集全体でひとつの世界をつくっています。そしてそれは、無垢な子どもの目から見た世界なのです。光にあふれ、不思議にあふれ、両親の愛に満たされた世界。憧れ、恐れ、安らぎ、驚きという複雑な色合いに彩られた世界。絶望と恐怖におおわれた現実のなかで、ミウォシュという詩人は、どうやって、そして、なぜ、このような繊細な詩的世界を創造できたのでしょうか。「ミウォシュだから」というのも、もちろん正しい答えでしょう。でも、答えはほかにもありそうです。皆さんはどのように思われるでしょうか。
ポーランドの詩人なんて、遠いものに感じられるかたも多いかもしれません。同じくポーランドノーベル賞詩人、シンボルスカの名前のほうが、有名かもしれませんね。この詩集の翻訳者のひとり、つかだみちこさんはシンボルスカの詩も訳しておられますが、あとがきにおいて、シンボルスカがミウォシュのことを仰ぎ見ていた様子を目撃したことを書いています。偉大な詩人シンボルスカが仰ぎ見る詩人、というエピソードで、ミウォシュがどのような人なのか、その一端がおわかりいただけるかもしれません。
この特別な詩集の日本語版を港の人から出版できたことは光栄なことだと、つくづく思います。デザインは、有山達也さんにお願いしました。B5版という少し大きめなサイズの薄い詩集、カバーと表紙は活版印刷です。繰り返し読み、味わうことのできる詩集になっていると思います。どうぞ読んでみてください。



[書名]世界 ポエマ・ナイヴネ
[著者]チェスワフ・ミウォシュ
[訳者]つかだみちこ、石原耒
[造本]B5判変型/並製本/カバー装/本文64頁
[定価]1800円(本体価格・税別)
ISBN978-4-89629-301-2 C0098
http://www.minatonohito.jp/products/173_01.html