『僕は、太陽をのむ』を刊行しました

新刊のお知らせです。四月と十月文庫の6冊目は、美術同人誌『四月と十月』の中心人物である牧野伊三夫さんの本です。『四月と十月』に発表してきたものに手を入れた作品や他誌で発表したもの、そして書き下ろしも含めたエッセイが一冊にまとまりました。絵画作品も数多く収録され、小型の画文集でもあります。(余談ですが、弊社社長をスケッチした作品も入ってます。)
昭和の文人のような牧野さんの風貌そのままの、朴訥としたあたたかみのある文章ですが、語られる内容からは、一心に絵に向き合う姿勢がひしひしと伝わってきます。子ども時代の思い出話からは(当然のことですが)牧野さんが生まれながらの画才の持ち主であることがうかがえますし、若い頃の挫折を率直につづった文章からは、50歳をすぎたいまも、内面になまなましくその体験を抱えていることが伝わってきます。数々の装丁画を手掛けたり、『雲の上』『飛騨』など地方の雑誌を手掛けたり八面六臂の活躍ぶりですが、その土台には、画家として、鋭さを失わず過激に、なおかつ、情を失わずふところ深くあろうとする精神があるのだと気付かされました。
そして、ぜひ読んでいただきたいのが、グラフィックデザイナー、葛西薫さんが、この本のために寄せてくださった文章「あの頃のわれらは」です。葛西さんは、牧野さんが画家として独立する前に勤めていたサン・アドの14年先輩。先輩としての、そして、同じものをつくる人間どうしとしての、思いやりとはげましにあふれていて、何か大切な贈り物をもらったような気持ちになりました。
本日から、東京・表参道のHBギャラリーで、牧野さんの個展が始まります。できたてほやほやのこの本も、会場で販売しています。
今回、真打登場となった「四月と十月文庫」のシリーズ。一冊ずつゆっくりと刊行してきましたが、ますます「らしく」なってきました。今後もとっておきの著者のみなさんが控えています。どうぞよろしくお願いいたします。

[書名]僕は、太陽をのむ 四月と十月文庫6
[著者]牧野伊三夫
[造本]B6判変型ソフトカバー/152頁
[定価]1,200円(本体価格・税別)
ISBN978-4-89629-307-4 C0395
http://www.minatonohito.jp/products/178_01.html