書店紹介[流水書房 広尾店]





今年の4月頃から、以前よりも頻繁に書店をまわって歩くようになりました。港の人では、大手の出版社のように営業専門の部署などは設けていないため、私が営業担当として、編集や一般業務の傍ら、書店まわりなどをしています。他の仕事が忙しくなるとつい営業活動がおろそかになりがちですが、原稿やゲラとだけ向かいあっていると、実際に本ができあがってからの反応が予測できなかったり、客観的な見方ができなくなってしまうことがよくあります。そんなとき、書店での本の売れ行きや棚での並べ方を調べたり、書店員さんの話を聞いたりすることは、本作りの現場にとってもたいへん勉強になるのです。


先日は、広尾にある流水書房を訪ねてきました。現在、この流水書房広尾店で文芸書を担当しているAさんは、以前青山ブックセンタ0本店にいらっしゃった頃から、港の人の本を好意的に扱ってくださったり、営業に行くたびに丁寧に話を聞いてくれたりと、とても信頼できる書店員さんでした。こちらのお店に移ってからも、北村太郎の『光が射してくる』や『雪の宿り 神西清小説セレクション』などを置いていただいています。


流水書房広尾店は、日比谷線「広尾」駅からすぐの広尾ガーデンの2階にある本屋さんです。売り場面積は決して広くはありませんが、Aさんが担当されている文芸書の棚は、一般の大型書店とはひと味違う、工夫を凝らした棚になっています。たとえば、『光が射してくる』が置かれた棚の周りには、グレアム・グリーン全集や、エリック・アンブラーの『あるスパイの墓碑銘』など、北村太郎が翻訳を手がけた本が並べられ、同じく「荒地」派詩人として活躍した田村隆一の本や、北村太郎をモデルにしたねじめ正一の『荒地の恋』なども一緒に置かれています。また『雪の宿り』の隣には、神西清が翻訳を手がけたチェーホフツルゲーネフらの本が並べられています。さらにその隣からは、『チェーホフ 短篇と手紙』の編纂者でもある山田稔さんの本が続きます。


このように、単にジャンルや著者によって分けるだけでなく、一冊一冊の内容などをよく考えて、本の組み合わせが作られているのがよくわかります。そのため、文芸の棚にも関わらず映画の本や思想書なども置かれていたり、書店員さんおすすめの本がフェアとして展開されていたり、他の書店では見られない工夫がたくさん見られます。広尾に行った際にはぜひ一度足を運んでみてください。一冊の本からまた別の本へとつながっていく、すてきな棚を見ることができます。



++++++++++++++++++++++++++++++

流水書房 広尾店
〒106-0047 東京都港区南麻布4-1-29 広尾ガーデン2F
電話 03-5423-708
営業時間 10:00〜20:00
定 休 日 第2、第3火曜日
*2010年9月閉店