一本の犀の角のようにただ独り歩め


 慌てふためいても、正気を失っても、あやふやとしていても、一個の光となった私は、きっと、一人でも一〇人でも百万人でも果てしなくひとりひとりの名前を呼ばわることでしょう、ゆらゆらとひとりひとりの命の言葉を想うことでしょう、生ある間にやりつくせなかったなら、死んでもやりつづけることでしょう、そのための命なんだから、光は命なんだから……。


 光あれ、光あれ、光あれ、
 たちきれ、たちきれ、たちきれ、
 はじまれ、はじまれ、はじまれ、
 はじまりの地で、言葉さきわい、歌さきわい、命さきわう、私たちであれ。

 
 私たちは深く強く祈る光です。






はじまれ 犀の角問わず語り』姜信子