新刊/詩集『妻を送る』(本堂明)が出来上がりました。



6月の新刊のお知らせです。本堂明さんの詩集『妻を送る 亡き人に贈る詩の架け橋』が出来上がりました。本詩集は、長年連れ添ってきた最愛の妻をガンで亡くした著者が、10年におよぶ闘病生活と別れとを綴った詩集です。装幀は清水理江さん。著者の本堂さんは、『サラリーマン読書人の経験』(同時代社)、『夢ナキ季節ノ歌』(影書房)などの著書を持っていますが、詩人としてはこれが初めての詩集となります。自分は詩人ではない、と語る本堂さんはなぜこの詩集を書いたのか。その動機については、あとがきに書かれています。


二〇一二年秋、妻サナエは十年に及ぶガンとの闘病生活の果てに亡くなった。六十一歳であった。苦しく、また、辛くもあったその十年間、私は折にふれ詩を書いてきた。自分では思いがけなかったが、最初の一句なり一行なりが頭に浮かぶと、自然に言葉が出てきた。私は詩人ではないし、詩についての訓練を受けてきたわけでもない。一介の市井の人間でも、人生の中にある、何かを受けとめる象徴的な時間の中では、物事に対する感覚も一番研ぎ澄まされるのかもしれない。人生でただ一回の詩心の季節であったのだ。(「あとがき 去りゆく命の日々に」より)


きわめて個人的な体験をつづった詩でありながら、最愛の人を失うことの苦しみと在りし日への思いを綴ったこの詩集は、読む人の心を強く打ちます。最愛の人の死という哀しく辛いできごとを通して、ひとりの人間に詩の言葉が降りそそいでくることの奇跡。ちいさなふたりの営みを記録する詩。本書は、滋味あふれる祈りの詩集です。



さようなら、妻よ。全ては終わったのだね。
もう二度と手を握ることもないのだね。
笑うことも、怒ることもせず、ただ静かに黄泉の国へと旅立って、たった一人で歩いて行くのだね。
もうどんなに揺り動かしても、答えてくれないのだね。
さようなら、妻よ。
私と共にこの家に生き、共に時を過ごした、かけがえのない私の写し身であった妻よ。
出来ることなら、夢でいいから会いにきておくれ。
私にはもう思い出しかないのだ。輝く宝石のような妻の思い出。


「さようなら、妻よ」


詩集『妻を送る 亡き人に贈る詩(ことば)の架け橋』
[著者]本堂明
[造本]四六判/並製本/カバー装/本文248頁
[定価]1,800円(本体価格・税別)
ISBN978-4-89629-277-0 C0092
http://www.minatonohito.jp/products/150_01.html