稲葉真弓詩集『心のてのひらに』を刊行します

稲葉真弓さんの詩集『心のてのひらに』ができあがりました。
港の人では昨年の3月、稲葉さんの『連作・志摩 ひかりへの旅』を出版しました。稲葉さんが愛した志摩半島の柔らかい光があふれてくるような詩が収められた詩集です。稲葉さんの訃報を受け取ったのは、刊行から半年も経たない夏、8月末のことでした。そして前の詩集からちょうど1年経った今、できたばかりの新しい詩集を手にして、おさえられないいろいろな思いが湧いてきます。
この詩集の成り立ちについて記した文章の一部を引用します。

二〇一四年八月一九日、稲葉真弓さんから書簡と詩の原稿を受け取った。書簡には重篤な病状に触れながら、これらの原稿を一冊の詩集にまとめてほしいとあった。(中略)書名は、「3.11の祈りが通じる 心のてのひらに納まるような一冊」という書簡のなかの稲葉さんのことばによった。 里舘勇治


未発表のものも含め20篇の詩が収められています。冒頭の作品は、3月のあの日のことを書いた「白い花」です。

いま地上には三月の光がさしていて
なにごともなく しかしなにかがわずかに変っていて
創世記のページの裏側を歩いているようです
         「白い花」より


そして最後に収めた作品、昨年発表された「受粉の日」で、稲葉さんは明日への希望をうたいます。

花粉のように飛びましょう
どこまでもどこまでも
飛散と受粉の旅をつづけましょう
(中略)
さあ わたしたちは
あした 白い皿に乗った
黄色い魔法の粉になるのですよ
未来を生きるための花の武器になるのですよ


 一般には小説家として知られた稲葉さんですが、高校時代に西脇順三郎作品に衝撃を受けて詩を書き始め、晩年も積極的に詩作、朗読に取り組んでおられました。
3月21日、東京・駒場日本近代文学館講堂にて、刊行記念の会が催されます。どなたでもご参加いただけます。詳しくは特設サイト(→)をごらんください。


『心のてのひらに』
[著者]稲葉真弓
[造本]四六判変型/上製本/カバー装/本文108頁
[定価]1,800円(本体価格・税別)
ISBN978-4-89629-291-6 C0092
http://www.minatonohito.jp/products/162_01.html